2025.09.02

次世代パワー半導体の制御技術開発に成功 ~イオン注入と熱処理により従来法の2倍の電流を実現~

低温プラズマ科学研究センターの堀 勝 特任教授、 小田 修 特任教授と清水 尚博 特任教授らの研究グループは、次世代パワー化合物半導体である酸化ガリウム(Ga2O3)において、Ni(ニッケル)をイオン注入して二段階熱処理をすることにより酸化ガリウムの中にp型NiO層を形成できる技術を開発しました。
本新規技術を利用することにより、これまで困難であったp型半導体層を用いた酸化ガリウムのパワーデバイス注3)が低コストで容易に製造できるようになります。
Ga2O3は、次世代パワー化合物半導体です。普及が進む炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)を超えてさらなる電力効率の改善が期待され、世界中で研究開発が進められています。その市場規模は149億円/年(2035年、富士経済:2025年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望)と推定されています。近年、Ga2O3の基板については融液成長法の一種であるEFG(Edge-defined Film-fed Growth)法でバルク単結晶基板が製造されるようになっていますが、p型制御技術が未完成のために、pnダイオードやMOSFET、IGBTなどのパワーデバイスの製造ができませんでした。またp型を用いないショットキーダイオードなどが開発されていますが性能が不安定で実用化が遅れていました。
本研究では世界の低温プラズマ技術のメッカである名古屋大学 低温プラズマ科学研究センターの最先端技術を活用しました。Ga2O3にNiをイオン注入した後、これを独自装置による酸素ラジカル照射下の300℃で熱処理してp型ドーパントとなるNiOを形成し、さらに酸素雰囲気、950℃で高速熱処理(RTA)することにより、Ga2O3中にNiOをアクセプターとしてp型層を容易に形成することに成功しました。
実際に本技術を用いてpnダイオードを試作し、従来法によるショットキーダイオードと比較して2倍の電流を得たほか、従来法よりも安定してダイオードができることを実証しました。

詳細はこちらをご覧ください。