未来を拓く低温プラズマ科学の最先端
研究拠点

プラズマとは、固体、液体、気体に続く物質の第4の状態と言われています。自然界には、炎、雷、オーロラ、太陽などのさまざまなプラズマがあります。プラズマは電子とイオンで構成されていますが、プラズマをうまく利用することにより、さまざまな工業応用が可能です。

 さて、低温プラズマの「低温」とは何でしょうか。低温に対してプラズマの温度が1億度を超える「高温」プラズマがあります。この高温プラズマを用いて水素の核融合反応を起こして発電を行うための研究が世界各国で行われています。

 私たちが扱う「低温」ですが、「低温」といいましても実は数万度の温度を持っています。そのため、通常なかなか実現できない化学反応を簡単に起こすことが可能です(逆にあまり高温ですと、折角できた化学物質が壊れてしまいますので、この場合は適度な「低温」が良いのです)

 この低温プラズマは、半導体などの電子デバイス、新機能材料、燃料電池の製造など、日本にとって極めて重要な科学技術分野となっています。名古屋大学は、低温プラズマ科学の研究において半世紀を超える歴史を持ち、数多くの優秀な研究者と研究成果を生み出しています。低温プラズマ科学研究を世界的にリードし、癌治療などの医療応用、成長促進などの農業、水産業応用などにも進出しています。プラズマから発生する活性種やその界面反応機構に関する知見を蓄積し、科学技術分野との融合や産学連携による学術研究の推進、更には新たな学問領域の確立を図っています。

 名古屋大学は、世界的に有名な産業の集積地に位置しており、大学が学術と産業の架け橋となることが必要不可欠です。そこで、2019年4月に、プラズマ関連センターを統合し、「名古屋大学低温プラズマ科学研究センター」を設立しました。同センターは、文部科学省から共同利用・共同研究拠点の指定を受け、他機関との有機的な連携により、未来の科学技術イノベーションを世界に先駆けて展開することを目的としています。さらに、2023年4月には重点研究分野として東海国立大学機構直轄事業に承認され、その事業を推進する体制として、岐阜大学と連携して「低温プラズマ総合科学研究拠点」を設立しました。

 センターの150台を超える独自のプラズマ装置と世界最高水準のプラズマ計測技術を駆使し、産学官連携によるプロセス、材料、デバイス、装置のイノベーションを継続的に創出し、世界的食糧危機への対応、次世代医療技術の確立、革新的な環境改善技術の確立等により、世界が直面する様々な問題を解決し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献します。

 当センターは、どなたでも無料で参加できるプラズマソサエティ(https://plasma-society.org)も運営しております。皆様にも加入いただき、プラズマの可能性を感じて頂きたいと思います。

センター長 大野 哲靖

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